夢を見ない人

夢を見ない人

「夜、眠ると昼間の世界とは別の世界を見る」
このことは、昔から人々の興味を引いてきました。
たとえば古代の世界では、この夢と呼ばれる現象は何か神秘的なもの、宗教や神に関わるものと考えられました。古代ギリシャの人たちは夢を「神のお告げ」と見なしましたし、キリスト教やイスラム教の文献を見てみると、必ずといっていいほど宗教者たちは夢によって何らかの啓示を得ていることがわかります。
一方、近現代に入ると、夢は人間の深層心理や潜在意識を表現するものだという考え方が一般的になっていきました。同時に、「人がなぜ夢を見るのか」ということについても本格的な研究が行われるようになりました。

現在、有力な説となっている夢のメカニズムは、「その日1日の記憶を脳が整理している」というものです。
覚醒している間、人の脳は絶えずフル回転で働き、目で見たり耳で聞いたり、手で触れたりした情報を蓄積しています。
覚醒の間は、いわば手当たり次第に部屋に家具や書類が投げ込まれているような感じです。
そして夜、眠るときに脳の海馬と呼ばれる部分が働き、それらの情報を整理します。家具を並べ、書類を整理して棚におさめます。その過程で、書類の中身がチラッと見える……これが夢だ、という説なのです。

しかし、その日に行かなかった場所が舞台になったり、会わなかった人に夢で会ったり、自分が子供だったり、夢の世界は混沌としています。
これはどういうことを意味しているのかというと、1日のうちに脳に芽生えたさまざまな感情を海馬が整理するとき、その日1日のうちに目にしたものではない、過去の人生で目にしたものを当てはめているのです。「この感情に合う映像は何か」と検索した結果、出てくるのが「行かなかった場所」「会わなかった人」「子供時代の自分」だったりするのです。
夢占いが私たちの心、感情を明らかにして教えてくれるものだというのは、まさしく夢にこのようなメカニズムがあるからこそいえることです。「あの場所は何だったのか」「あの人と会ったのはどういう意味なのか」ということを診断することで、夢が表現した感情を知ることができるのです。